Peerless B.O.D. (Build on Demand) Guitar
飯田楽器では、Peerless Acoustic Guitar のカスタムオーダーの受け付けを開始いたしました。
Peerless B.O.D. (Build on Demand) Guitarと名付けられたこの受注システムでは、マテリアルの選択から形状や構造、インレイ等の装飾に至るまで、可能な限りユーザーの方々のリクエストにお答えいたします。
(Peerless は、飯田楽器が製造〜販売しているオリジナルギターのブランドです。このウェブサイトでは、Peerless Guitar のご紹介をしています。)
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B.O.D.ギターの製作に関しては、飯田楽器の工場長として数十年のキャリアを持つ服部 一宇氏のフルハンドメイドによって全ての工程が進められます。工場での生産管理というキャリアは、素材を見極める目、様々なスタイルのギターの構造、その生産工程に至るすべての製作過程を把握、コントロールするというトータルバランスに優れたギタービルダーとしてのスピリットを育て上げたと言えるでしょう。現在もルシアーとして第一線で活躍中の服部氏、彼の手から創り出されるギターにはトラディショナルだけにこだわる事のない、柔軟性のあるモダニズムにあふれています。
B.O.D.ギター 製作のご案内
ユーザーの方々が求めるギターのイメージは、サウンドという形の無い要素であったり、具体的な形状やデザインが既存する場合など様々です。それらの要素をミーティングを重ねながら、ギターのスペックに盛り込んでいく作業から B.O.D.ギターの製作はスタートします。

Peerless B.O.D.Guitar / Shara #001
B.O.D.ギターの記念すべき一本目として、Earthshaker のギターリストである石原 "SHARA" 慎一郎氏の Acoustic Guitarを製作いたしました。シャラ氏のギター製作の様子を順を追って解説する事で、B.O.D.ギターのご案内とさせていただきます。


シャラ氏のリクエストは Jumbo Style のアコースティックギターでした。以前 Earthshaker のレコーディング時に知人から借りた
Jumbo Style のギターの音にとても興味があったとの事でした。このギターは、いわゆる G社の "J " モデルではなかったそうですが、メイプル材のサイド、バックで構成された17インチのボディー、更にメイプルネックから生み出される低域の締まった音質が、Earthshaker
サウンドの中に埋もれる事が無かったそうです。
私たち製作スタッフは、まず Jumbo Style のギターの構造をチェックする事からスタートしました。入手したギターは G社の Jumbo
Style ですが、とある有名ギターリストのモデルでした。しかしこのギターを調べてみたところ、表甲の厚さや力木のサイズ、そのスキャロップされた形状にまるでM社のギターをイメージしてしまいました。私たちは古い
G社の資料や、17インチのボディーサイズからもう少し堅牢な構造をイメージしていたのです。(その後に入手した G社の Jモデルの図面から、この力木の形状は近年の
G社のスタイルだと知るのですが。)
次に私たちはスプルーストップ、メイプルサイドバックのボディー構造について検討しました。タップチューニングを行いながら甲板の厚みを決めてボディーを製作する服部氏も、メイプル材のチューニングはかなり難しいとの事でした。そこで私たちは
G社の Jモデルも初期はローズウッドでサイドバックが構成されている事に着目しました。私たちがストックする数十年のシーズニングを経たローズウッドを使えば、コシがあり十二分に締まった低音を再生出来ると判断しました。
上の写真は、服部氏が制作中のガットギターのボディーをチェックするシャラ氏。このボディーに使われたトップ材のスプルース、サイドバック材のローズウッドは共に長期に亘るシーズニングを経た材料です。ボディーをタッピングした音の感覚で、材料の持つ音質やボディーの鳴りを判断します。手前にあるネック材は、今回のシャラ氏のギターに使う材料です。メイプルにカーボンファイバーをラミネートした構造です。
シャラ氏とのミーティングで、マテリアルや構造などのスペックが決まり、求める音のイメージがおぼろげながら固まってきました。私たちは実際にシャラ氏のギターに使う材料のチョイスを行いました。
Body Top / Sitka Spruce (シトカ スプルース)
北アメリカの太平洋岸、アラスカからカリフォルニアに亘って生育し、数あるスプルース材の中では最も大きくなるシトカスプルース。Engelmann(エンゲルマン)
Spruce 等に比べ比較的やわらかく、温かみのある淡黄色をしています。
後述するサイド、バック材やネック材とのコンビネーションを考慮に入れた結果、長期間のシーズニングを経たシトカスプルースを選びました。タップチューニングによって決められる甲板の厚み、力木のサイズや形状等、このトップ材がギターの音質に大きな影響を与える事は言うまでもありません。
この写真のスプルースは実際にシャラ氏のギターに使われる材料です。
Body Side, Back / Rosewood (ローズウッド)
インド、ビルマ、インドネシアなどの東南アジアに産する材で、濃紫褐色ないし濃紫赤色で濃紫色の縞を持ち、別名『紫檀』とも呼ばれます。
十二分に目が詰まったローズウッドを選び抜きましたが、この甲板のシーズニング期間も半端ではありません。タッピングによって音質をチェックすれば、この甲板の安定し、かつ引き締まった状態が一目瞭然(いえ、一聴瞭然ですね)です。
スプルーストップ、ローズサイドバックというアコースティックギターの基本ともいえるマテリアルのコンビネーションから、どれだけオリジナリティーに溢れたギターサウンドが産み出されるのか、この先の製作過程紹介で徐々に明らかに、、。
Sound Hole / Rosette 加工
表甲の外周を大まかに木取った後、サウンドホール周りの飾り (Rosette/ロゼッタ と呼びます) を施します。
下記の写真はその加工過程です。左は表甲にロゼッタの溝を掘り、メキシコ貝を埋めたところです。メキシコ貝の両側は黒い木象で挟み、貝のラインをクッキリと際立たせます。メキシコ貝の外にもう一重、木象の飾りを施して二重のロゼッタが完成です。中央の写真は、ペーパーで表面を均した状態です。最後にサウンドホールの穴開け加工を行って終了です。



Body Top, Back の厚み決め
前述しましたが、服部氏はタップチューニングという方法でそれぞれの材料に最良の音質を与える加工を行います。それがここで紹介する甲板の厚み決めです。
甲板の特定の部分を意識的に削り、その素材に最適な振動系を創り出します。ギターは高音弦〜低音弦と決して均一なバランスに保たれている訳ではありません。低音弦側は強い張力と低音域の持つ低い周波数で振動していて、高音弦とは全く異なった状態に置かれています。高音から低音まで、ギター全体のサウンドバランスが取れているという事は、個々の材料の持つ音質特性が見事なバランスを保っているという事なのです。この状態を材料の加工によって創り出すのが、タップチューニングによる厚み決めです。
下の写真では表甲、裏甲を削りながら最良の厚みを作っているところです。甲板の厚さを測定するのは Thickness Caliper と呼ばれる特殊なゲージを使います。
表甲のスプルースの厚み決めが完了したら、裏甲のローズウッドも同様に厚み決めを行います。



Body Side 成型
ボディーサイドのローズウッド材を Jumbo Style に成型します。
ホットアイロンと呼ばれる楕円形(厳密には左右のアールが異なっています)の形をした円柱の金属型を加熱して、胴板(ボディーサイド)を手で曲げていきます。楽器製作に使われる素材の中では比較的硬いローズウッドを、思い通りのアールに曲げていく作業は繊細かつ大胆な技術を必要とします。胴板は
Jumbo Style の胴曲げ冶具で確認を行いながら曲げられます。成型完了後は、形状を安定させるために冶具の中に納めた状態で保管されます。中央の写真に写っているアルミニュームの枠が胴曲げの冶具です。
成型が済んだ胴板には、ライニングやブロックが接着されます。ライニングは裏張りという意味の英語ですが、胴板の裏側に貼り付けられ、表甲と裏甲の接着の補助を行う材料を指します。一般的には中付けやジャバラと呼ばれる事が多い様です。右の写真は中付けの接着を行っているところです。



Neck 加工
シャラ氏のギターのネック材は前述いたしました通り、メイプルにカーボンファイバーをラミネートしたマテリアルを選びました。
ヘッド部分の両サイドにメイプル材を接着(写真左)、ヘッドトップ面にエボニーを貼り付けています(写真中央)。この段階でネックの幅は大まかに加工されています。
その後、ヘッド形状を加工します。右側の写真はヘッド回りにバインディング用の溝が彫られた状態です。



ネックの握り形状の加工はとても重要なポイントです。ギター製作者の感性がそのまま反映されると言っても過言ではありません。ギターのブランドやメーカーによってネックシェイプには大まかなイメージがあります。太さ、丸や三角といった形状などそのシェイプはそのギターの個性でもあります。その形状をハンドメイドで削り出す訳ですから、製作者の感性が指先からネックに伝わるのは当然のことでしょう。
カンナや刃物を使い大まかに削りだされたネック(写真右)は、更なる仕上げの工程を経て完成します。



ヘッド周りにメキシコ貝のインレイが施されました。外周にはローズウッドのバインディングを巻いています。メキシコ貝は小さなインレイを一つずつ手作業で並べていきます。ヘッド上部に塗られているのは、メキシコ貝の隙間を埋めるための樹脂です。
ネック加工と並行して指板の加工も進められています。
このギターの指板インレイには、シャラ氏のトレードマークの『ANKH』が施されるのは言うまでもありません。ボディ、ヘッドのインレイに合わせてメキシコ貝で指板インレイも製作しました。



力木
表甲、裏甲には力木(ブレーシング)と呼ばれる細い棒状の木材(一般的にはスプルース)を取り付けます。力木の役目は薄い甲板の形状保持です。しかしアコースティックギターの音はこの力木によって決定されると言っても過言ではありません。エレクトリックギターのピックアップに相当すると言えます。
アコースティックギターの表甲、裏甲にはなだらかなアーチが付けられています。ボディーの耐性を増すためであり、ギターの音質を向上させるためでもあります。このアーチのアールを決め、形状を保持するのが力木です。力木は接着工程の前に、甲板と接着する面に基準となるアールが付けられています。甲板はこのアールに馴染むことで、アーチ形状を保つことになります。
左の写真は手作業によって力木を接着しているところです。一般に量産ギターの力木接着はプレス機によって行われます。しかし力木の接着がギターの音に大きな影響を与える事を考慮すれば、写真の様に力木ごとに適正な圧力を加える接着が必要なことは言うまでもありません。力木と一口で言っても、甲板に接着する場所によって太さや長さ、形状、接着面のアールなど多種多様です。それを一本ごとに数か所のポイントで、木材の反る力を利用して接着します。この力加減は長年の経験によるもので、必要以上に圧力を加え過ぎ甲板のアーチバランスを壊しては意味がありません。



力木は甲板の形状保持だけではなく、ギターの音に大きな影響を与えることは前述しました。形状保持の目的だけならば、大きく太い力木を何本も接着すれば問題はありません。しかしアコースティックギターが『鳴る』ということは、表甲や裏甲、及びその他の部位が振動するという事です。その振動が大きければ、大きな音で鳴ります。そのためには力木が細くしなやかでなければいけません。力木はギターの甲板の形状保持と、振動させるという相反する二つの役目を担っています。
振動と言ってもただ大きい音で鳴れば良いわけではありません。アコースティックギターに最も重要な、『良い音』で鳴る必要があります。そのために力木の大きさや形状、接着する場所など様々なファクターが検討されてギターの個性が生み出されます。
上部中央、右の写真は接着した力木の形状を加工しているところです。突きノミや豆ガンナを使い、力木のスキャロップ加工等を行っています。
ボディー成型
力木の加工の完了したトップ、バック、及びサイド材を組み合わせてボディーを成型します。『胴造り』という呼び方をする事もあります。
写真左は力木の加工がほぼ終わった表甲です。写真中央はサイドとバック材の接着が完了した状態で、この上に表甲を接着します。サイド材に施された中付けは、甲板の力木が接する部分をカットしてあります。
写真右は表甲の接着が終わり、成型の終了したボディーです。サイドの外周サイズに比べトップ、バックの甲板は一回り大きくなっています。この後の工程としてトップ、バックの外周にバインディングを巻きますが、その溝加工を施す時に甲板の外周は胴板に沿って一回り小さく(バインディング、インレイの幅の分)カットされます。



このギターのバインディングにはローズウッドを巻きます。サイド、バック材もローズウッドですが、その境目には白くて細い木象を挟み込みます。表甲のバインディングの内側にはメキシコ貝のインレイを施します。幅、厚さ共に
1.5mmのインレイは一つ一つ手作業で組み込まれていきます。インレイの長さは長い物で 7mm、カーブのきつい部分や以前にご紹介したサウンドホール周りのロゼッタには、もう少し短いサイズのインレイを使います。これはスムーズで美しいカーブを創り出すためです。場合によっては
7mmのインレイをカットしてラインをつなぎ合わせる加工も行います。
写真左はメキシコ貝のインレイです。中央の写真でご覧いただける様に手作業で組み込んでいきます。
メキシコ貝の両側は黒/白/黒のパターンの木象で挟み込まれ、一番外にローズウッドのバインディングを巻きます。



裏甲側も同様にローズウッドのバインディングを巻きます。写真右は、ボディーエンド部分に入れられた三角形の飾り(尻飾りと呼びます)です。バインディング、及び尻飾りと胴板はローズウッド材で、その境には白い木象が挟み込まれています。
以上の工程でボディー完成です。



ネック ジョイント
完成したボディーにネックをセットします。
指板接着前の状態なので、ネックエンドの形状とボディーのあり溝の様子が良く解ります。



指板接着、フレット入れ
ネックがジョイントされたギターに指板を接着します。
接着が十分に安定した後、指板表面のすり合わせを行ってからフレットを打ち込みます。ネック、ボディー、指板と異なった素材の接着を行う訳ですから、接着剤の乾燥に伴って若干の狂い(材料の動き)が生じる場合があります。狂いを完全に調整し、指板面が安定した状態でフレット入れを行います。
ネックシェイプを仕上げて、ギターの生地完成です。




生地完成状態のギター、シャラ氏に確認していただきました。
ネックの握り形状、全体のバランスなど塗装工程に入る前のチェックです。ネックシェイプなど若干の調整は可能ですが「特に問題なし!」とのお言葉をいただきました。
ギター本体はいよいよ塗装工程に入りますが、並行してブリッジの製作も進められます。ヘッド形状のイメージに合わせたブリッジのデザインになる予定です。
ブリッジ
このギターに搭載されるブリッジはエボニー素材で製作され、ヘッド形状をイメージしたデザイになっています。
ジャンボサイズのボディーに合わせた、通常より一回り大きくデザイン。低い音域の振動を無理なくボディーに伝えるために、低音弦側は更に大きい形状になっています。


塗装
ギターの塗装工程は大きく分けて、下塗り、中塗り、上塗り(トップ)と呼ばれる段階を経て行われます。下塗り工程で材料の目(導管など)を埋め、塗装の場を作ります。中塗り工程では何回にも分けて塗料の塗付を行い、ギターを保護する塗膜が形成されます。トップは仕上げの塗装で、塗料の素材によって完成したギターの光沢や手触りに違いが出ます。

左の写真は中塗工程の途中状態です。
塗付した塗料が十分に乾燥した後、研磨を行い塗膜の場を作っていきます。この工程を何度も繰り返して、塗膜層が作り上げられていきます。
写真は研磨後の状態で、ツヤ消しになっています。これから更に中塗の塗装を施します。
塗装完了後にブリッジを接着する部分には、塗料が付着しないようにマスキングテープが貼られています。同様に指板表面にもテープが貼られます。
研磨されたギターに、繰り返し中塗り塗装が行われます。



塗料の塗布直後の写真です。塗料が未乾燥、濡れた感じの光沢がまだ残っています。
セットアップ〜完成

セットアップも終了し、完成した Peerless B.O.D.Guitar です。




Peerless B.O.D.Guitar はシャラ氏の手元へ。アコースティックシェイカー、SM コレクション、ソロアルバムのレコーディングに幅広く活躍中です。


シャラ氏のソロプロジェクト、mintmints の 1st.Album / Whitemints (4月30日発売) でも B.O.DGuitar は大活躍。こちらのサイトでそのサウンドを確認する事ができます。
mintmints / ミントミンツ
トップページで Travelling という曲の PV が流れます。(クリックの後、すぐに曲が始まります)後半 1分28秒辺りから始まるスパニッシュギターソロ、圧巻です。
B.O.D. Guitar のお問い合わせは飯田楽器まで